2016年4月5日火曜日

京都精華大学卒業生ファイル2016―未来の問い



















4月18日から京都精華大学ギャラリーフロールで開催される「京都精華大学卒業生ファイル2016―未来の問い」に参加させていただきます。

前年の卒業生ファイルの副題は「未来と出会う」、そして今年は「未来の問い」です。

展覧会では、そのテーマに相応しい、作品に独自の文字を刻み記したΟΡΓΑΝΟΝ(オルガノン)シリーズのインスタレーションを展開します。

ΟΡΓΑΝΟΝシリーズの制作を開始したのは3.11以降ですが、独自の文字を作ろうと思った最大のきっかけとして、森鴎外の漢文にまつわるエピソードに衝撃を受けたということがあります。 過去の展覧会などで既に複数の方々にお話させていただいたのですが、鴎外の漢文にまつわるエピソードに影響を受けたことを正式に記述するのは、おそらく今回が初めてです。

中学生の時に『井沢式「日本史入門」講座②|万世一系/日本建国の秘密の巻』という本を読みました。そこには、井沢元彦氏による森鴎外『帝諡考(ていしこう)』の考察が載っていました。

井沢氏の書籍によると、森鴎外は最後の漢学者と言われるほど漢籍に深い造詣を持っていたようです。森鴎外は漢籍に記されていた膨大な情報を元に、天皇の諡号の由来を調べ、それを『帝諡考』として、まとめました。そして、ここが重要だと思うのですが、『帝諡考』の記述に使われた文体は漢文でした。(文語体表記の箇所もあり)

日本人でありながら、漢文で書かれた書籍を元に知り得た知識、考察したことを、漢文で記述するという少し奇妙なことをしたのです。

森鴎外が漢文学に深い素養があったのに対し、明治以降、夏目漱石などの多くの文学者は英文学のほうにシフトし、漢文を操れる人間が減っていき、『帝諡考』は、現在もほとんどの学者が手をつけていないそうです。

鴎外が、あえて、日本人が使わない文体を用いて『帝諡考』を記述したのは何故か。それは、自らが生きる時代や社会のためではなく、未来に向けて残すべきメッセージがあったからだと、私は勝手に想像しています。

他にも中学3年から大学1年くらいに読んだり見たりした本や図録がΟΡΓΑΝΟΝシリーズの形成に大きく影響しています。

そして、現在も周囲の情報や他者の考えに影響を受けながら、ΟΡΓΑΝΟΝシリーズ独自の文字は少しずつ増え続けています。文法もここ最近、複雑化してきました。

ΟΡΓΑΝΟΝシリーズは、自分の中で最も鮮明なビジョンを持って制作しています。実は15年先ぐらいのネタのストックがありますが(笑)、ここから先は、現時点での自分では実現が困難なことばかり。

今回の展示ではシリーズ形成に至った背景を示唆出来ればと考えております。

未来への問いを発しながら、自らにとって、現時点での創作を包括的に捉え直す契機となるよう挑みます。

ご高覧いただけましたら幸いです。

ご期待ください!





京都精華大学卒業生ファイル2016 ―未来の問い

会期:2016年4月18日(月)~5月1日(日)
※5月1日(日)はオープンキャンパスを開催
休館日:4月24日(日)
開館時間:11:00~18:00
入館料:無料
会場:京都精華大学ギャラリーフロール
主催:京都精華大学
協力:タカ・イシイギャラリー






出品作家:
安野谷昌穂、石山哲央、岡村優太、賀門利誓、佐伯洋江、榊原太朗、迫 鉄平、ドーリー、堀川すなお、
 三重野 龍、芳木麻里絵